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ILAF02 公開研究会「芸術生産と受容の変質について」報告

2012年9月3日 10:05 AM
ILAF02 公開研究会「芸術生産と受容の変質について」報告

31日(金)の報告です。

今日のゲストはこのふたりです。
鳥取大学地域学部専任講師・小泉元宏先生
香港中文大学非常勤助教授・呂佩怡先生

司会は首都大学東京助教であり、CIANの山口が担当しました。

今日は、昨今、世界的に見られるようになった社会と関わる芸術の新しい動向をテーマに日本やアジアの諸事例の知見を交えながら考察を深めていきます。

【写真中央・小泉先生】

小泉先生の発表タイトルは「カンバン方式としての国際展」。

「カンバン方式 (Just in Time)」と称されるトヨタ自動車の生産システムにちなんで、即興的に生産/消費される芸術の場として国際展が機能している点を指摘され、また日本独自の欧米制度依存と東京一極集中の現状が国内での展覧会の画一性をもたらしていると指摘され、今後は世界的に展開するこの文化の消費システムとは異なるミクロな芸術の動きを「ボトムアップ型」と称してその可能性についてご紹介していただきました。


【写真中央・呂先生】

次なる呂先生の発表は「台湾におけるNGPA(New Genre of Public Art)の地域的変容」です。
NGPAとは、90年代にアメリカの研究者スーザン・レイシーによって提唱された新しいパブリック・アートの概念です。「パブリック・アート」が公共空間に彫刻やインスタレーションを設置することと同義になりつつあるなか、近年の芸術活動でより社会に密接に関わり、そこに新しい関係性・ネットワークを生み出していくプロジェクトが現れ、それらを以前のタイプと区別して「NGPA」と呼び、NGPA理論に従って台湾で展開されている3つの具体的事例の妥当性と検証と変容について紹介していただきました。

その後のディスカッションが白熱し、時間も1時間あまりオーパーしてしまいました。
おふたりの発表はともに変容する芸術の事例に関して紹介いただきました。共通するのは背景に世界的な社会・経済・政治の変化があり、そこにローカルなアートの動向が多様なかたちで応答している点でした。

社会運動もしくは政治活動における介入ツール(道具)としてアートと恊働している点ですが、
社会と関わる場合、どうしても活動自体が運動的な要素を強くもってしまいます。
運動には目的や目標の遂行が付随してきます。
社会運動としての目的や目標を達成したならば、それは社会運動として評価されるのであり、アートとして評価されるわけではないです。
それでは、社会に関わるアートというのは、どの点においてアートとして評価されるのか?それは活動の過程の中で現れた作品としてのモノなのか?

昨今、よく言われるように「作品はプロセスそのものだ」という議論もされましたが、さすがにそれだけですませられません。
「プロセス」という用語が対象として何をさすのか曖昧すぎるからです。
そのなかで、この日の吟味の対象として「ネットワーク」という言葉がフォーカスされました。
「ネットワーク」もよく言われる言葉ですが、作品および経験形式の問題として扱うことでテーマを少し掘り下げられたと思えます。
この点については議論は延々と続きましたので、詳細はここでは触れませんがまたどこかで紹介できればと思います。

最後は参加者でバーベキューしました。

ひとまず、ご報告まで。

CIAN