香港から2時間あまり移動し、中国本土との隣接都市・深圳へやってきました。
深圳の目的は「深圳彫刻ビエンナーレ2014」です。
テーマに「We Have Never Participated」を掲げ、近年の参加型アート(participatory Art)を中心的に取り上げています。
アーティスティック・ディレクターにロンドン・テイトモダンのマルコ・ダニエル氏です。
「深圳彫刻ビエンナーレ」と聞いて「なぜ深圳?」と思われた方も多いかもしれません。今回は2012年のCIAN研究会プログラムで来日した台湾人研究者呂佩怡さんがこのビエンナーレでアソシエイト・キュレーターを務めていおり、彼女からの情報で知ることができました。
現地で呂さん本人に面会することができ、展覧会準備における苦労話を多く聞くことができました。展示作品決定に当たっては現地当局によるチェックが幾重にも行われ、最終的に作品展示まで辿り着くまで相当調整が入ったとのことでした。
最終的に展示まで至ることができた作品の多くはドキュメントであったり「Participation」をテーマとしたインスタレーションであったりします。アーティストや観客が相互に関わりながら現在進行系の「ワーク・イン・プログレス」型の作品はあまり少なかったです。それでも呂さんは「深圳」という街は新しいプロジェクトに寛容であり、おそらく深圳だからこそ中国でこのような「参加型」アートを問う展覧会が可能になったのではないかとも言います。
たしかに深圳という街は1979年の改革・開放政策以来経済特別区に指定されて以来、国内で新規かつ最先端事業に積極的に取組んできたところです。深圳で成功したモデルはその後中国全土に拡散・移植されます。その意味で深圳は新しいことを貪欲に吸収・消化する実験都市なのです。
ビエンナーレが開催されているこのエリア「華僑城創意文化園」も文化事業の特別区にあたります。
40年前には3万人程度の漁村が2014年には1200万人の人口を抱える大都市になり、そして様々な社会実験が行われる街です。さらにアジアの中心を目指そうとする香港のすぐそばにあるのが恐いところです。
参考:深圳・華僑城創意文化園のPRビデオ
さて、話を展覧会に戻します。
ビエンナーレの展示会場となるOCAT深圳は産業空洞化で遊休地となった工場団地跡地を利用したアートスペースです。さきほど、検閲が入り展示が難しかったという話をしましたが、それでもかなりチャレンジングな作品がいくつかあります。
会場に入ってすぐベンチとテーブルが並べられており、関係者やアーティストが打ち合せしたり作業したりしていますが、ここに作品があります。
作家:邱志杰+宋振与店口居民+总体艺术工作室 (Qiu Zhijie & Song Zhen with Diankou residents and Total Art Studio)
机に彫刻刀で掘り出されたメッセージはなんと「選挙公約」とのこと。
よく知られているように中華人民共和国には選挙制度はありません。
ゆえに住民の方に「もし選挙があってあなたが立候補するとしたら何をする?」というインタビューをしてまわり、その回答を街角でよく見かけるテーブルに刻んでいるのです。
これが検閲に通っているとなると、逆に通らなかった作品はよっぽどなのでしょうか。。
気になるところです。
>>②へ続く
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